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最高裁判所第三小法廷 昭和28年(あ)2129号 決定

主文

本件各上告を棄却する。

理由

被告人清水英男弁護人増岡章三被告人川瀬年信弁護人桑名邦雄の各上告趣意(後記)第一点について。

原審が、その第一回公判期日において弁護人の請求にかかる示談書の証拠調を却下し、その取調をしないまま判決を言渡したことは所論のとおりであるが、原判決はなんら所論引用の判例に反する判断をしたものでないから、原判決について判例違反を主張することは適法な上告理由とならない。かつ所論の前提とする理由について考えてみても、示談書が所論のように第一審判決後に成立したものであれば、かかる証拠につき、刑訴三九三条一項但書が、常に控訴審に証拠調の義務を課したものとは解されないのみならず、また原審は被告人清水英男については、第一審の量刑を重きに失すると認め破棄自判し刑を減じ、被告人川瀬年信については原審の量刑は失当でないと判示しているのであるから、所論の証拠を取り調べなかったからといって、所論引用の判例の趣旨にもなんら反するところはない。論旨はいずれにしても採用できない。

同第二点について。

所論は単なる量刑不当の主張であり、また訴訟法違反の主張に過ぎないから、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

その他記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 井上登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)

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